入院時重症患者対応メディエーターについて
入院時重症患者対応メディエーターの役割
愛するご家族が突然の病気や事故により医療機関へ搬送され、呼び出し連絡を受けてあわてて病院へ駆けつけた方のことを想像してください。早く会わせてほしいのにすぐには面会を許されず、長く待たされた後に、医師から次々と専門用語を並べられて病状の説明を受けたとしても、冷静にその内容を理解できるでしょうか。
ようやくかなった面会では、ベッド上で目を閉じまったく動かない姿で、手足にはたくさんの管がぶら下がり、口には太い管と人工呼吸器、頭側にはたくさんの数値や波形がモニター上に流れています。これからどうなるのか。
そのような状況に置かれたご家族に寄り添って、担当医療スタッフとの間に入り、必要なサポートをするのが『入院時重症患者対応メディエーター』です。
必要とされる資格について(現状と今後)
重症の救急患者が入院する救急医療機関において、現場で重症例の看護やいろいろな問題解決に向けての調整、家族のサポートなどに従事する医療スタッフを中心として『入院時重症患者対応メディエーター』として活動いただくものになります。
実質的には、看護師、社会福祉士、公認心理師、薬剤師など、重症例に対する診療内容について知識をもったスタッフが担当することが想定されます。通常時は本来の仕事をこなしつつ、医療スタッフや患者家族の求めに応じて、患者単位でメディエーター業務に就きます。将来的にメディエーター業務の専任となることもありえます。
活動に際しては、医療関係団体等が実施する特に重篤な患者及びその家族等に対する支援に係る研修を修了していることが望ましいと考えられています。
支援の実際
メディエーションを要請された場合には、速やかに患者家族と面会し、まずは寄り添い、サポートの必要性と考えられる支援内容を聞きとり(二者面談)、医師(スタッフ)との二者面談も設定します。医師と家族の面談時には、できるだけ同席して対話促進の仲介を行います(三者面談)。
具体的には、面談を通じて①十分理解できていないと思われる病態、診療内容、治療方針についての説明を医師側に求めたり、②両者が疑問に思うこと、求めるところを相手側に伝えて相互理解の促進を図り、③両者の許可を得たうえで、他職種の助言をもらう、などを主な業務とし、両者の相互理解の促進に努めます。
院内での立場・所属
必ずしも専従である必要はなく、日常的には職種に応じた通常業務を行い、救急の場面で必要となったときに、患者(とその家族)単位でメディエーター業務につきます。この間、支障のない限り本来の業務を併任しても結構です。同一医療機関内に複数の資格者がいたほうが、業務の遂行にあたって融通がききますし、互いに助言も受けやすく(しやすく)なります。できる限り同じ担当者が最後まで受けもつことが推奨されます。円滑な業務遂行にあたっては、組織上、診療支援・管理部門に直属し、部門管理者(担当副院長、部長等)にはこの業務への十分な理解とサポートが求められます。
活動に伴う診療報酬について
2022年1月28日に開催された第514回中央社会保険医療協議会総会で、条件の整った集中治療領域での活動に対し、一定日数を上限として加算が認められることが明記されました。(参照先リンク)
今後の展開
実際の臨床現場での活動を通して、多くの知見や臨床経験が今後蓄積されてくるものと思われますので、貴重な症例や新たなアイディアの報告の場を設けたいと考えています。そうした知見を多くの仲間たちと共有し、より高い次元での入院時重症患者対応メディエーションを体現していきましょう。本ウェブサイトでご案内している養成講習も、その内容をフィードバックして改善していきます。そして、研究成果を発表したり論文等で発信していくために資格者が参加する研究会の設立も目指していきます。
2022年2月
三宅 康史(帝京大学医学部救急医学講座)
厚生労働科学研究(移植医療基盤整備研究事業)脳死下、心停止後の臓器・組織提供における
効率的な連携体制の構築に資する研究(研究代表者 横田 裕行)
分担研究:重症患者対応メディエーター(仮称)のあり方に関する研究
日本臨床救急医学会 教育研修委員会 入院時重症患者対応メディエーター養成小委員会委員長